企業YouTubeチャンネルを始めて売上3倍/週3本の動画配信を5年間継続できた仕組みとは?/YouTubeライブ配信やLINE活用など店舗集客のマーケティング手法に迫る【だるまや京染本店】
YouTubeで販売促進!アートブレインズのケビンです。
この記事では、だるまや京染め本店 六代目 八木賢一さんへのインタビューの様子(前編)をお届けします。
八木さんは、チャンネル登録者数9,800人以上のYouTubeチャンネルを運営されています。YouTubeを始められたきっかけや、企画の考え方、アウトソースの重要性やYouTubeの反響などを教えていただきました。
YouTubeを始めたきっかけ
YouTubeを始めたきっかけは、2018年の11月にさかのぼります。
着物の仕立て直しについて発信したいという思いがあり、アートブレインズのケビンさんに相談しました。
当時、お客様が仕立て直しの相談をすると、「着物は仕立て直しができない」と正しくない情報を与えるお店が多かったんです。
実際、正しい寸法が出せなかったり、着物が色やけしてしまっていたりという理由から、仕立て直しが難しいためお断りする意味で、新しく作った方が良いと勧めるお店が多いという現実がありました。
我々洗い張り屋としては、納得いかず、正しい情報を伝えたいと思ったのがきっかけです。
当然、仕立て直しができない場合もありますが、できない理由や、どういう懸念があるかをきちんと伝えて、お客様が知識を得たうえで相談できる状況にしたいと思いました。
そして3か月後には、初めての配信をしました。発信したい内容が固まっていたので、スピード感を持って始められたと思います。
YouTube運用で苦労したこと
2019年3月からYouTubeをスタートしてもうすぐ5年目を迎えますが、大変だったのは、最初の1年です。
チャンネル登録者数1,000人を目指すため、週1本・年間50本の動画を配信するという目標を立てました。
最初のうちは、伝えたいことが明確だったため、洗い張りの工程紹介など、かなり手の込んだ動画を作っていました。
しかし、4~5本の動画でやりきってしまい、次に何をしたら良いかがわからなくなりました。
今後もまた同じ労力をかけて動画を作らねばと思うと億劫になってしまい、夏頃まで間が空いてしまいました。
継続するために工夫した企画や撮り方
YouTubeを継続するために色々と考えた末、ワンカットで喋る方法にたどり着きました。
具体的には、1つの動画で1テーマ、10分ぐらいのコンテンツを喋るスタイルに変えたら、進むようになりました。
元々人前で喋るのが好きで、昔は講師のバイトをやっていたことも。それもあって、喋るスタイルが自分にすごく馴染みました。
着物というちょっと分かりづらく奥深いものを、分かりやすく伝えることは、自分の強みとマッチしたように思います。文章を書くのも得意ですが、喋る方が気楽なので、今はかなりやりやすくなりました。
撮影前の準備
台本など撮影前の準備については、ケースバイケースです。
ビフォーアフターを紹介する動画の場合は、ほとんど何にも考えずに撮り始めます。
一方で、たとえば、御召とは何かを詳細に説明する場合は、まず自分の中で整理をします。2週間ほどかかりましたね。
色々な人の意見を聞いたり電話したりして、こう分類すると分かりやすいんじゃないかと自分なりに考えていきます。たとえば御召ってこうなんです、とだけ伝えても伝わらない。他のちり面や大島と比べてどうなのか、その中でここを御召と呼ぶんだと伝えると、伝わりやすいかと。
動画の視聴者は詳しい人ばかりでなく、ほとんど分からない人を前提に考えています。
ですので、動画の構図を作るまでに時間がかかる場合はありますが、作ってしまえば撮影はほぼワンテイクです。構図を作る過程で、自分の中でも整理ができています。
通常の時は、たとえばお客様からの質問が多い項目で、まだ動画で喋ってないものがあれば、そこを切り口にして撮影します。よくある質問とは、みなさんが同じように悩んでいることですよね。
このメリットは、同じ質問があったときに、「詳しくはこの動画を見てください」という使い方ができることです。文章だけで伝えるとなかなか大変だし、伝わりにくいのですが、動画を共有することで詳細に伝えることができるんです。
問い合わせに対して色々なパターンの動画を作っておけば、様々な対応ができると気が付きました。
まるで辞書を作っている感じですね。この質問がきたら、このページを読んでくださいと対応するイメージです。
素晴らしい活用の仕方ですね。
我々も、まずは皆さんが悩まれてることや疑問に思われることを発信しようと伝えています。それは、多くの人が見てくれますし、繰り返し見てもらえるからです。
まさに辞書みたいな話ですが、八木さんはナチュラルに実践されていますね。
喋ることに重きを置いて、テーマを決めたら、切り口はたくさんあるんです。たとえば寸法というテーマなら、袖幅や肩幅、裄はどこかなど、全部喋れるので動画がどんどん生まれます。
YouTube企画の考え方
そうは言っても、企画を考えるのは一番苦労するところです。
今は、毎週月曜日と金曜日にチャンネル更新、水曜日の夜はYouTubeライブと、週3本やっています。その中で、たとえば第3金曜日は今月のおすすめ、感謝祭の時は開始時と終わり間際など、必ずやる内容を予め決めているので、企画を新しく考えるのは1ヵ月に4つぐらいです。
その4つを、ビフォーアフターや事例紹介などで埋めていく感じですかね。
番組表のように、レギュラーを作っていくのが運用を続けてくポイントですよね。
そうすると運用する側も楽だし、キラーコンテンツで再生も伸びやすくなる。ポイントは、そのレギュラーを見つけられるかどうかだと思います。僕の場合は、やりながら見つけていきました。
たとえば、「今月のおすすめ」を毎月YouTubeで紹介し始めたのは、3年前ぐらいです。結構、売れるってことに気がついたんです。YouTube動画を見た方から直接LINEで注文が来て、銀行振り込みでお支払い、完結。
レギュラーコンテンツを決めて配信する中で、見出せた感覚です。
動画編集は効率重視でアウトソース
動画の編集は、最初の3年間は自分でやっていました。たとえば10分の動画を作るのに3、4時間ほどかかりましたね。
今は、クラウドワークスで知り合った方に依頼していますが、これってすごく大事だと。
たとえば対談コンテンツは、テロップ入れが超大変なんです。自分でその作業をやらなきゃと思ったら、対談コンテンツは撮りたくないと思ってしまう(笑)これやると編集が大変だからやめとこう、というようにどこかでブレーキ踏んでしまうんですよね。
だけど編集をアウトソースしたら、自分が本当にやりたいことをできるようになりました。それでストックが持てるようになり。
アウトソースを考えたきっかけは、ケビンさんに「絶対編集は外に投げた方が良いですよ!何も僕たちの会社じゃなくても良いので。」とアドバイスをもらったからです。
外注することで、まず時間が空きますよね。八木さんのお話のように、企画を止めてしまう脳が働くことも実際あると思います。
今はクラウドソーシングなどで動画編集を頼める方々も、とても増えてきていますね。
自ら編集作業をするよりクオリティも高いし、自分でやる場合の時給を考えたら、外注の方がはるかに安いんです。やらない手はないですね。
YouTubeの反響
受注数が2倍以上に
YouTubeを始める前と比べると、折れ線グラフの角度が急激に変わりましたね。
うちでは毎年5%成長を目指していて、売上は継続的に伸びてはいるのですが、YouTubeを始めて2年目ぐらいからグンと伸びました。
たとえば仕立て直しだと、自分が後継ぎとなった16年前の受注件数は年間730ほどだったのが、今は年間1,500件と倍以上になっています。
LINE登録者数4,200人
元々ホームページを主に集客していた時は、検索エンジンに表示されて見つけてもらっていました。その入り口がYouTubeに変わり、顧客数は一気に増えました。昔から北海道から沖縄までお客様はいましたが、その数が急増した感覚です。
公式LINEの友だち登録は4,200人ほどですが、これもYouTubeを始めてから急に伸びましたね。
「気軽にLINEで相談してね」と意識的に動画内で言っているんです。事前にちょっと聞きたいなと思うことって、ありませんか?お店に行って聞くのも怖いじゃん?(笑)
たとえば「他のお店でこう言われたんだけど」など、セカンドオピニオン的な相談も受けています。
LINEだから一人ひとり返信できますけど、電話だったらこの人数は答えられないですね。
もちろんお店の売上も大事ですが、そのために全部やっているわけではなくて。困っている人がいたら助けたいというシンプルな思いがあります。YouTubeを始めたきっかけもそこですしね。
職人の採用もYouTubeで
和裁士さん(着物の仕立て職人)の募集もYouTubeでやっています。
去年は15人採用して、今は全部で41人です。日本一だろう、これは(笑)目標は50人規模ですね。受注数が急増したので、そうじゃないと仕事が回らなくて。
YouTubeを始めてから、和裁士さんやお客さん、同業やメーカーの方など色々な方と知り合うことができたと感じています。
顧客とのマッチング
YouTubeを始めてから、自分と相性の良いお客さんだけが来るようになりました。YouTubeを通じて「僕はこういう人です」と人となりが伝わるので、お客さんも理解してくれた上で来店してくれる。
ホームページだけで集客していた頃は、やっぱりミスマッチもありましたね。お客さんとやりとりした後で、「あなたの対応嫌い」と目の前で言われたこともあったんです。でも今は、それがほぼなくなりました。
お客さんは事前に人となりを知ったうえで「この人に頼もう」と来てくれるので、ある程度信用された状態からスタートできる。当然ミスしたら怒られますけど、それでも許してくれる人が多いです。とてもやりやすくなりました。
YouTubeを通じて商品だけでなくお店の雰囲気も伝えることができるから、お客さん自身も選んで来てださいますよね。
合うお客さんの見つけ方というと、お客さんを選んでるみたいに聞こえるかもしれないですけど、当然お客さんにもお店を選ぶ権利あるので。
お互いにとって良いことですよね。
だって自分たちも飲食店に行くとき、波長の合う、雰囲気の良い店の方が良いですもんね。そういうのって大事だなと思います。
隙や弱みも見せる
八木さんは過去に「だるまやを選ばない理由」など、一見ネガティブな内容の動画も出されています。
隙や弱みといった部分も正直に発信されている回もあって、素晴らしいなと思って見ていました。
思いついた時、天才的なマーケティングだと思いました(笑)
お店としては、悩んだ結果うちを選ばなかった理由を1番知りたいわけです。でも普通は教えてくれない。だから特典をつけてアンケートを実施しました。
実際は、表現を柔らかく変えましたが、仕立て直しをまだ経験していない理由を聞きました。
たとえば金額的な理由なのか、心理的ハードルがあるのか、どんな不安があるのかを知りたかったんです。その問いに対して多かった答えは、やっぱり面と向かってが良いから、遠いから、自分のサイズがわからないので頼めない、など。
でも理由がわかれば打ち手を講じることができる。仕立て直しの明確なニーズが存在することもわかりました。
仕立て直しを頼んだことのある人には、頼む前と後での印象はどうだったかを答えてもらいました。すると多くの人が「接客が怖かった」と回答していて…3日間落ち込みましたね(笑)ちなみにアンケートは50ほど集まりました。
その後、自分の接客って怖いのかな…とスタッフに相談しました。YouTubeを撮影するときは、やっぱりテンション上げて撮っています。ただ普段は、こんなに明るい人間じゃないので…。
淡々としているし、仕事が溜まっていたり、お客さんを待たせていたりすると、ピリピリしてしまい、怖かったと言われることが結構ありました。
ちなみにそれも動画として発信したら、お客さんから「怖いと思っていたのは、私だけじゃなかったんですね!良かった」というコメントがたくさんきました(笑)
でも、そういう一面を出すのがYouTubeの良さだなと思います。
完璧できれいな部分だけを見せても、距離感を生んでしまうことがあるけれど、自分の考えや思いをあえてあまり編集せずにそのまま出すことは、先ほどの「合うお客さんを見つける」点でも重要だと思っています。
その役割がYouTubeライブですね。水曜日に飲んでやってます。
後編のお知らせ
対談の様子は後編に続きます!
YouTubeライブの活用方法やメリット、LINEでの販売促進や、YouTubeが一番良いと思う理由などを、たっぷり語っていただきました。
公式LINEに登録すると、後編動画を見ることができます。
ぜひチェックしてみてください。